最判昭28.2.18(農地買収処分に民法177条は適用されるか?)
旧自作農創設特別措置法に基づく農地買収処分は、権力的・公法的行為であり、農地買収処分にあたって誰を所有者と見るかについては、民法の177条が適用されるか?
“最判昭和28年2月18日(昭和26年(オ)第745号)の判決では、以下のように結論されています:
- 主な争点:
旧自作農創設特別措置法に基づく農地買収処分において、民法177条(不動産物権変動の対抗要件)が適用されるかどうか。 - 判決の結論:
民法177条は適用されない。 - 判決の理由:
a) 農地買収処分は権力的公法行為であり、私法上の取引行為とは性質が異なる。
b) 農地買収処分の効力は、法律に基づいて発生するものであり、登記の有無によって左右されない。
c) 農地買収処分は、真実の所有者に対して行われるべきであり、登記簿上の所有者のみを基準とすべきではない。 - 具体的な判示:
「農地買収処分は権力的公法行為であつて、私法上の取引行為ではないから、民法第百七十七条の適用を受くべきものではない。従つて農地買収処分に当つては登記簿上の所有者のみならず真実の所有者をも買収の相手方とすべきものである。」 - 判決の意義:
この判決により、農地買収処分においては登記の有無にかかわらず、実質的な権利関係を考慮して真実の所有者を特定する必要があることが明確になりました。 - 影響:
この判決は、公法上の行為と私法上の規定の適用関係について重要な先例となり、その後の行政法実務や判例に大きな影響を与えました。
この判決は、公法上の行為である農地買収処分の特殊性を認識し、形式的な登記の基準ではなく、実質的な権利関係を重視する立場を明確にしたものとして重要です。これにより、行政庁は農地買収処分を行う際に、登記簿上の記載だけでなく、実際の所有関係を調査し、真実の所有者を特定する必要があることが確立されました。”