最判昭31.4.24

租税滞納処分は、国家が公権力を発動して財産所有者の意思いかんにかかわらず一方的に処分の効果を発生させる行為であるという点で、自作農創設特別措置法(当時)所定の農地買収処分に類似するものであるから、物権変動の対抗要件に関する民法の規定は適用されないか?

”最高裁判所昭和31年4月24日判決(昭和29年(オ)第628号)は、税金の滞納処分における差押えに関して重要な判断を示しました。この判決の要点は以下の通りです:

  1. 事案の概要:
    国税滞納処分として不動産が差し押さえられたが、その不動産の所有権が第三者に移転されていた事例。
  2. 主な争点:
    滞納処分による差押えに民法177条(不動産物権変動の対抗要件)が適用されるか。
  3. 判決の結論:
    民法177条が適用される。
  4. 判決の理由:
    a) 滞納処分による差押えは、滞納者の財産から強制的に徴収する手続きであり、滞納者の一般財産を対象とする。
    b) 差押えの効力は、滞納者に属する財産についてのみ及ぶ。
    c) 差押えの時点で、当該財産が第三者に譲渡されていた場合、その譲渡が第三者に対抗できるものでなければ、差押えの効力は及ばない。
  5. 具体的な判示:
    「国税滞納処分による差押は、滞納者の財産につき行われるものであるから、その差押の効力は、差押当時において滞納者に属していた財産についてのみ及ぶものと解すべきである。従って、差押当時既に滞納者から第三者に譲渡されていた不動産については、その譲渡が民法第百七十七条により差押債権者たる国に対抗し得ないものでない限り、これに対し差押の効力を及ぼすことはできない」
  6. 農地買収処分との違い:
    この判決は、昭和28年2月18日判決(農地買収処分に関するもの)とは異なる結論を示しています。滞納処分による差押えは、農地買収処分とは性質が異なると判断されました。
  7. 判決の意義:
    この判決により、税金の滞納処分における差押えについては、民法177条が適用されることが明確になりました。つまり、登記の有無が重要な意味を持つことになります。

この判決は、公法上の行為であっても、その性質によっては私法の規定(この場合は民法177条)が適用される場合があることを示した重要な先例となっています。滞納処分による差押えの場合、登記を経由していない譲受人は、その権利を差押債権者である国に対抗できないことになります。”

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