最判昭51.3.18(特別受益の価額は現在価値に換算すべきか?)
特別受益に関する最高裁判例である最判昭和51年3月18日について解説いたします。
- 事案の概要:
この事案は、被相続人の生前に、相続人の一人である長男が被相続人から土地の贈与を受けていた事例です。他の相続人たちが、この贈与を特別受益として遺産分割の際に考慮すべきだと主張しました。 - 争点:
贈与された財産の価額をいつの時点で評価すべきかが主な争点となりました。 - 判決要旨:
最高裁は以下のように判示しました:
a) 特別受益の価額は、原則として、相続開始時の価額で評価すべきである。
b) ただし、贈与時から相続開始時までの間に、受贈財産の価額に著しい変動があった場合には、衡平の見地から、相続開始時の価額によることが相当でないと認められる特段の事情がある場合がある。
c) そのような特段の事情がある場合には、裁判所は具体的事情を考慮して、贈与時の価額を基準とするなど適切な価額を定めることができる。 - 本判決の意義:
この判決は、特別受益の評価時期について重要な指針を示しました。原則として相続開始時の価額で評価すべきとしつつ、例外的な場合には柔軟な対応を認めることで、公平な遺産分割を実現するための基準を提示しました。 - その後の影響:
この判決以降、特別受益の評価に関する裁判実務では、この基準が広く採用されています。ただし、「著しい変動」や「特段の事情」の判断については、個々の事案に応じて裁判所が判断しています。
この判決は、特別受益の評価に関する重要な先例として、現在も相続法実務において重要な位置を占めています。