最判昭60.7.16(建築確認に裁量は認められるか?)

この判例(最高裁判所昭和60年7月16日判決)では、建築主事による建築確認について裁量が許されるとは判示していません。むしろ、建築確認の性質を以下のように捉えています:

  1. 建築確認の性質:
    最高裁は、建築確認を「建築主事が建築主からの申請に基づき、当該建築計画が建築基準関係規定に適合しているかどうかを公権的に判断する行為」と定義しました。
  2. 裁量の不存在:
    この定義からわかるように、建築主事の役割は建築計画が法令に適合しているかどうかを判断することに限定されています。つまり、建築基準法などの関係法令に照らして、計画が基準を満たしているかどうかを確認するだけであり、裁量の余地はないとされています。
  3. 覊束行為としての建築確認:
    建築確認は、法令に定められた要件を満たしているかどうかを機械的に判断する「覊束行為」と解釈されています。建築主事には、法令の要件を満たしている場合に確認を与え、満たしていない場合に与えないという判断しか許されません。
  4. 裁量との対比:
    これは、行政機関が状況に応じて判断できる「裁量行為」とは対照的です。建築確認においては、建築主事の個人的な判断や状況に応じた柔軟な対応は認められていません。

したがって、この判例は建築主事による建築確認に裁量を認めるものではなく、むしろ裁量の余地がない覊束行為であることを示唆しているといえます。この解釈は、建築確認の公平性と予測可能性を確保し、恣意的な判断を防ぐ役割を果たしています。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です